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小島外科
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内シャントの合併症

内シャントの合併症

長期間の使用により、狭窄・閉塞・膨隆などの変化や、指末端の循環不全による痺れ・疼痛(血流不足)あるいは浮腫・腫脹(血流過剰)が生じることがあります。さらに麻酔や手術中の末梢神経の傷害による知覚異常もあります。
実際のところは、透析や針の穿刺の方法や手技に関連したものが最も多いようです。

1)感染

手術時の感染もありますが、多くは、穿刺による針や傷からの感染によることが多いようです。ただ、それ以外にも、肺炎や膀胱炎などの全身の炎症を引き起こしている細菌が血液に乗ってシャントに付着することも少なからず見受けられます。最近の当院での検討でも、人工血管では9割の方がMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が原因菌となっています。自家静脈シャントでは
MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)や表皮ブドウ球菌の頻度が多くなりますが、MRSAが半数以上を占めております。
対処方針として、感染の程度にもよりますが、敗血症などに至っている可能性がある場合にはシャント閉鎖が必要です。
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2)手の虚血(スティール症候群)

人工血管を使用した場合に多いのですが、心臓から指先に至る血液がシャントに取られてしまって指先に行くべき血液が不足する場合に起こります。
特に、糖尿病などで動脈の循環状態が良くない方に起こる頻度が圧倒的に多いようです。
痺れや痛み、あるいは指先に潰瘍が出来たりするような場合は、シャントを閉鎖したりシャント血流量を減らす処置を行う必要があります。

3)うっ血(sore finger syndrome)

虚血と逆の場合です。指先から心臓に帰るべき血液が、シャントに流れ込む血液量が多すぎるために、指先の血液が帰れなくなって、手先に血液がうっ血するために起こります。
あるいは、シャントに異常が発生して、心臓方向へ流れる血液が手先の方向に流れるようになったために起こる場合もあります。
シャントの修理が必要になります。

4)狭窄・血栓形成

最も多い合併症ですが、血管(特に静脈)が細く・狭くなって、そこを原因として血液が固まってしまう状態ですので、狭窄をバルーンで拡張する(経皮的血管形成術:PTA)あるいは手術で血管形成する(血管形成術)あるいは内シャント再作製が必要になります。
経皮的血管形成術(PTA)はお手軽な方法で、当院でも随時行っております。
PTAかそれ以外か、選択の基準については、

  • 分枝による牽引が原因で狭窄を来している場合
  • 石灰化が原因となっている場合
  • 瘤(コブ)が原因で渦流が狭窄を起こしている場合
  • 狭窄部より心臓側で強く血流を阻害している原因がある場合
  • 頻回にPTAが必要な狭窄

などはPTA以外を選択する方針としております。
最も多い合併症ですが、血管(特に静脈)が細く・狭くなって、そこを原因として血液が固まってしまう状態ですので、狭窄をバルーンで拡張する(経皮的血管形成術)あるいは手術で血管形成する(血管形成術)あるいは内シャント再作製が必要になります。
経皮的血管形成術はお手軽な方法ですが、術後の血栓形成を予防するためにヘパリンを点滴で投薬する必要がありますので入院が必須条件となります。
これに対して、再作製の場合は入院の必要はありません。

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5)仮性(動脈)瘤

多くの場合、シャントよりも心臓に近い側の静脈に狭窄などの流れの悪いところがあるのが主な原因で、仮性動脈瘤が大きくなりますと破裂や出血のおそれがありますので、ご自分で瘤をおさえてみて痛みがある場合には手術で摘出することをお勧めします。
もちろん、入院は必要ありません。

6)出血・血腫

穿刺の後で出血が止まりにくくなってきた。あるいは、大きな血腫が出来た。
などの場合は慌てる必要はありませんが、修復が必要です。
血腫が大きい場合は、後で仮性動脈瘤をつくってきますし、コブが大きい場合で表面がテカテカしてきたり、皮膚が薄くなってくるような場合には切り取る必要があります。
たいていは、一部人工血管でその部分を置換することが多いです。

7)出血したときの対処法

出血・血腫などが突然に出血したときの対処法をお知らせします。

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【その1】
慌てず騒がず、ただひたすら押さえること押さえる場所が肝心です
出血している場所がわかっていればその真上をピンポイントで押さえること
わからない場合は内シャントの吻合部をピンポイントで押さえさらに、出血で膨らんでいるところを手の平で押さえる

【その2】
15分間しっかり押さえていればほとんどの場合は止血します
※注意点は、必ずピンポイントで押さえること、押さえる場所を動かさないこと

【その3】
それでも止血しない場合は、もう15分間押さえること
押さえながら、他の人に病院へ連絡してもらう

よく、言うとおりにしたけど止まらなかった、と言う方がありますが、本当に15分間ピッシリ押さえましたか?
途中で「止まったかな?」と思って手をずらせたり、緩めたりしませんでしたか?
「うわっ!まだ止まってない」という場合は、この時点から15分間ですよ。
最初から15分ではありませんから。

一般的に、静脈からの出血は軽く抑えるだけで簡単に止血するものです。
内シャントは、人工的に静脈の中に動脈の血液が流れ込むように作ってあるのでシャント吻合部を指でピンポイント押さえて、シャントを(一時的に)閉鎖すれば、静脈は普通の静脈の血流状態となります。
もちろん太さは太いままです。
これを理解していただければ、

(1)シャントをピンポイントで閉鎖させる、
(2)出血している部分を軽く手の平で圧迫する、

この2点で止血するはずです。

広く押えても、チカラが分散されるだけですので、意味がありません。
ともかく、ピンポイントで15分間動かさない、この2点です。